レース概要
MAGP(Minicar Autonomous Grand-Prix)は1/10スケールのラジコンカーをベース車両とした自動運転レースで,ハードウェア構築からソフトウェア実装を通して自動運転技術を学ぶと共に,新たな研究活動の場として活用してもらうことを目指すものです.各チームはモータドライバ,LiDAR,制御PCなどを搭載した1/10スケールラジコンカーの設計と,自己位置推定,経路追従,障害物回避,機械学習などの自動運転技術の理論・実装を学び,その集大成としてレースに参加し,障害物や他車両に衝突せずに如何に速くコースを走破できるかを競います.
本大会は,海外で開催されるRoboRacer(オリジナルの大会はこちら)にインスパイアされており,同様のコンセプト,類似のレギュレーションで実施されます.
MAGPは上記RoboRacerへの登竜門として,自動運転技術の学習と,研究・開発スキルの獲得による,日本の学生,社会人のレベルアップの機会として設立しました.
日本にはたくさんのロボティクス,制御分野の研究者,学生,技術者がおり,高度な技術を持っているにも関わらず,その技術を世界的にアピールする機会が極めて少ないと考えています.日本の技術を世界レベルに底上げし,世界と対等に戦い,競い合える環境の一つとして,貢献していきたいと思っています.
日本には認識,計画,制御に関する多くの学生,研究者,技術者がいますが,RoboRacerをはじめとする国際コンペではなかなか日本チームを見ることができません.海外の学術ソサイエティ,企業,ファンドに認めてもらう機会を持つため,盛り上げていきたいと思っています.
※MAGPは元大会の主催,Professor Rahul Mangharamから承認を受けています,MAGPで練習し,研究した成果をもとにぜひ世界大会に出場して,日本勢の優勝を目指しましょう!
使用する車体
[ RoboRacer class ]
使用する車体はTraxxas Slash 4×4 Premiumシャーシに,下記にあるようなモータドライバ,センサ,制御PCなどを搭載したものとします.通信は発進,停止,緊急停止等のほか,テレメトリのための利用は可能ですが,外部の計算リソースを用いた認識,計画,制御その他の指令は禁止です.車体の改造方法や電装についてはこちらを参考にしてください.記載のないものを利用する場合はお問い合わせください.ただし屋内GPS等グローバルな位置を直接定位するセンサは使用禁止とします.
- モータドライバ
- センサ
- UTM-30LX 相当またはそれ以下のスペックの2D LIDAR (3D Lidarは禁止です)
- Intel RealSense 相当またはそれ以下のスペックのRGB(D)カメラ (自己位置推定機能を有するものは禁止です)
- カメラ (通常のRGB画像または白黒画像のみを取得する2Dカメラであれば性能は制限されません)
- 制御PC
- NVIDIA Jetson Series
- Intel NUC
- またはこれら相当以下のスペックの計算機(Raspberry Pi等)
また車体は以下の要件を満たす必要がありますのでご注意ください.
- 車載PCのみで制御されること.計算リソースを外部PCに持つことはNG.
- 駆動用DCモータのはシャーシ付属のVelineon 3500 kV 1つとし複数のモータを使うことはできません.
- DCモータ用バッテリーは3 cell LIPOバッテリー1つとします.
[ MAGP class]
加えて,MAGPでは,日本大会であることから,日本製タミヤ社の下記のセットアップも積極的に使っていただきたいと考えています.
世界大会RoboRacerのTraxxas社セットアップに比べ,費用を抑えて車両構築が可能です.また,一般的なスーツケース等にも格納可能なサイズで,大会参加の出張にも便利です.走行に関連する部分(シャーシ,パワートレイン,足回り等)以外の点についてはRoboRacerルール準拠です.
- 使用シャーシ,モーター
- TAMIYA社 1/10スケール シャーシ
- TT-02 シリーズシャーシ (TT02 Type S(RX) , TT02 R(R) 等 )
- M シリーズシャーシ (M-05, M-07, M08シャーシ等)
- ホイールベース・幅等が同等のTAMIYA純正シャーシ,または同等品
(Tamiya純正で,かつ1/10スケールを謳うもの)
- ホイールベース・幅等が同等のTAMIYA純正シャーシ,または同等品
- その他,同様のサイズを持つ市販のシャーシ.
車体サイズ(300~400mm),ホイールベース(200mm~)を目安とします.
ただし下記TAMIYA純正のスピコンやモーターの使用が必要です.
- スピードコントローラー
- TBLE-04S (タミヤRCシステム ファインスペック 2.4Gに付属)
- TBLE-04SR (ブラシレス用T17.5以上)
- 上記のいずれか.改造品,TAMIYA社外品ははレギュレーション外とする.
他社製シャーシ,またはオリジナルシャーシでも,サイズ,パワートレインが上記レギュレーション内であれば可.
- 駆動モーター
- TAMIYA純正ブラシモータ(TT02用)
- 540-Nなど540タイプモータ (タミヤRCシステム ファインスペック 2.4Gに標準で付属)
- その他 TT-02シャーシ用/純正モータの一部 (純正モータ)
- ※ストックモーターシリーズは禁止
- ※改造品,社外品はレギュレーション外
- TAMIYA純正ブラシレスモータ(TT02用)でT17.5以上のもの
- TAMIYAブラシレスモータ T21.5 / T17.5
- ※T15.5,T10.5は純正でも禁止とします
- ※改造品,社外品はレギュレーション外
- TAMIYA純正ブラシモータ(TT02用)
- タイヤ
- TAMIYA純正タイヤ(TT02用純正タイヤ・ホイールなど)
- ※改造品,社外品はレギュレーション外,特に粘着性の素材を使ったものは
コース保護のためOpenクラスでも使用禁止です. - その他,ステアサーボや各種伝達部品(シャフト,ベアリング等)は自由に改造いただけます.
- TAMIYA社 1/10スケール シャーシ
- 主駆動用電池
- TAMIYA 7.2V Ni-MH
- TAMIYA 6.6 LF
- または2Cell相当電圧の互換バッテリー.衝突がありますので,LIPOを利用する際にはケーシング付きのバッテリを利用のうえ,シャーシフレーム等に保護された,直接衝撃されない場所に配置してください.
- センサ
- RoboRacerルールに準ずる
- 制御PC
- RoboRacerルールに準ずる
[ Open class ]
およその走行サイズ(MAGP class, RoboRacer classと同等)がそろっていれば,車両を限定しないクラスです.使用モータ等は規定されませんが,トーナメント戦には参加できなかったり,表彰等の対象とはならない場合があります(各大会の規定を確認).
- 使用する車体
- およそ1/10スケールのサイズであること.
- 他車の走行を妨げないサイズ,形状であること.
- 安全に走行可能であること.(ケーシングの無いLIPOバッテリは不可,衝突時にバッテリーに直接衝撃しない場所に配置すること)
- 大きすぎない(3Cell相当品以下,5000mAh以下程度)の電池を用いること.
- 人(特に子供など)に衝撃した場合にも安全が保たれる速度,トルクを守ること.
- 駆動,操舵以外の部分で可動部分がないこと(可変エアロ,ダクトファン等).
- センサ
- Roboracer規定に従う
- 計算機
- Roboracer規定に従う
走行速度のみを競う競技会ではなく,同程度のハードウェア,走行性能を持つ車両を使用しながらも,ソフトウェアによる機械学習,プランニング,制御の優劣を競うコンペティションである主旨を理解のうえ,ご参加ください.
[ その他注意事項 ]
- タイヤ
- 床面保護のため,極端に柔らかいタイヤ,粘着性のあるタイヤ等,タイヤマークが残る可能性があるタイヤの使用を禁止します.
原則Traxxas,またはタミヤのオフィシャルタイヤをご利用ください.また,持続的なドリフト走行なども同様の理由で禁止します.
- 床面保護のため,極端に柔らかいタイヤ,粘着性のあるタイヤ等,タイヤマークが残る可能性があるタイヤの使用を禁止します.
- ハードウェア改造について
- 本コンペティションの趣旨は,ソフトウェアの優劣を競うことにあります.
ハードウェアの改造,特殊な走行機構等による速さの追求は本意ではありません.このコンペティションそのものの趣旨をご理解のうえ,参加ください. - 同様の趣旨で,極端にサイズの異なる(大きいor小さい)車両セットアップについても禁止します.
- 本コンペティションの趣旨は,ソフトウェアの優劣を競うことにあります.
- 緊急停止
- Joystickからの入力により走行開始操作,緊急停止が可能であること.
- 走行中に,高い相対速度をもって他車両への激突が予想される場合は,自ら減速すること.スポーツマンシップに則った競技参加をお願いします.
- 安全対策
- 他車両が自車を検出できるよう,車体後部に以下を満足するボックスを搭載すること.
- 幅12cm以上,奥行き12cm以上
- ボックスの最上部が地上から20cm以上
- 衝突時の衝撃緩和のためバンパーを取り付けること.クッション性の素材をフロントに取り付けるなど簡単なもので十分です.可能であれば前だけでなく他車からの衝撃に備え,前後,または左右など,適切に設置ください.(車両サイズに対し大きすぎるクッションは取り付け不可)
- 他車が前方,後方,側方から衝突しても,搭載バッテリに直接激突しない構造を取ること.
- 他車両が自車を検出できるよう,車体後部に以下を満足するボックスを搭載すること.
ルール
ルールはこちらの元大会のルールに基づきます.以下の章を参照ください.
- GENERAL
- IN-PERSON (PHYSICAL) COMPETITION
- シャーシについては2.1.bのRestricted Classを参照してください.
コース
コースは20m~30m x 10m程度のフラットな地面上にこちらのようなダクトを利用して作成され,最小コース幅はおよそ車体3つ分となります.ダクトの連結部にはLiDARの光が通り過ぎてしまう箇所があります.また,誰にでも参加いただける機会とするため,単色のラインを引きます(ライン色は床面色により異なる場合があります.大会当日ご確認ください).ただしラインはセンターとは限らず,最適な走行ラインとはなりません.
競技方法
競技の手順,方法は,大会によって異なりますが,基本的には下記の二つがあります.
詳細は各大会のWEBページを参照ください.
予選トライアル
各チーム2回ずつ5分間の単独走行中の最速ラップタイムとコース壁への衝突無しで連続走破できたラップ数の2つを計測し,それぞれの順位に応じて決勝トーナメントの組み合わせが決まります.
- 各車両,指定された場所に小型のトランスポンダを取り付けます.取り付け場所は相談のうえ,スタッフ指示に従ってください.
- コースに衝突した場合,速やかに車両を停止させてください.その後車両を衝突地点付近に移動させてから再スタートしてください.
- ラップ数のカウントはチェックポイント(計測点)からの一周,で行います.コース壁に衝突後再スタートした場合,次のチェックポイントを通過した時点がカウント開始で,もう一周回ってラップ数1とカウントされます.
- 予選1回目と予選2回目の走行で車両のセッティング,ソフトウェア設定を変更できます.5分の時間内であれば,変更作業を行ってもかまいません.
- 走行中の車両のセッティング変更を行う場合は車両を停止して行うものとします.手動,自動とわず,走行中の遠隔によるパラメータ変更等は禁止です(緊急停止指令を除く).この場合,その後のラップ数は上記の通りチェックポイントからカウント開始となります.
- 一度5分間の走行が始まると,衝突後の車両移動やセッティング変更の途中も時間は止まりませんのでご注意ください.
決勝トーナメント
コースの離れた2点から同時にスタートし,どちらが先に10周できるかを競います.これをスタート地点を入れ替えながら3セット行い2勝したチームの勝利となります.
- レース開始前に10分(各大会規定で変更になる場合があります)を限度として各車両の機能チェックを行います.これらを時間内に通過できなかった場合はその時点で敗退となります.
- 障害物回避: 他車への激突を予防するため,コース上に配置した障害物を避ける,もしくは障害物の前で停止することができるか確認します.手動での緊急停止機能を使って代替してもかまいません.
- 緊急停止: ジョイスティックからの入力により,車両を停止できるかを確認します.
- コースや障害物への衝突にはペナルティがありません.衝突時の対応は予選トライアルと同様で,衝突した場所と同じか,それより手前に戻し,再スタートしてください.
- 他車両からの激突により壁に衝突してしまうなど,他車を走行継続不可能にする自体が発生した場合,一度レースを止めて両車体を衝突地点に戻してから再スタートとなります.衝突を起こした側が明らかで,その原因となった車両のみが走行不可能な場合,再スタートせず続行する場合があります.